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本来なら、いくら雛とは言えど、ロウが、
そこまでしてやる必要はなかったけれど。見てしまった以上、知らぬふりは出来ず、また手当てをしてやった。
「………ところで。お前の姉は長患いか?」
何故、そんなことを聞いてしまったのか。ロウ自身にもわからなかった。あまり、人間に関わるべきではない、とわかっていたけれど。
僅かばかりの縁が結ばれてしまったからか。この童は放っておくことが出来ないようだ。
「?…………うん、ずいぶん前から………」
『ずいぶん前』とは、曖昧な答えだが、幼子故、正確な歳月はわからないのかも知れない。
ロウとて、育ての親の老白狐に教わったこと以外は知らぬことが多い。独りで生きてゆくのに、困らぬ程度の知識と常識。
老白狐は鎮守の任に就いていたからか。人間の世の理にも通じていた。
社にて奉られていたとは言え、あまり人間に好感情は抱いておらず、達観しているようでもあったが………。
「……………童。姉は何の病か分かるか?」
老白狐の教えの賜物か。ロウは、薬師として生計をたてられるほどの薬の知識を持っていた。人間と極力関わらぬため、陰遁生活を送り、薬師として生きるつもりがなかっただけだ。
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