- 司狼丸の過去 -

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 狐等はともかくとしても、狼等は己より大きな家畜でも、群れで襲えば問題ない。熊や鴉等の雑食の獣とて、油断は出来ぬだろう。  ロウとて、毎度助けられるわけでもない。沢に水を汲みに行くことや、川に魚を捕りに行くこともある。  あまりに遠く、距離が離れていれば。この童が襲われても、間に合わぬことも皆無とは言えぬ。 -関わり過ぎては危険なのだ。己よりも、こ  の童にとっては-  この童にとっての身寄りは、長患いと言う姉一人。その姉とやらが、如何程の年齢かは知らぬが、病が癒えてもこの童と二人で、満足に生きてゆけるのかどうか………。  人間(ヒト)と関わりたくないのだ、放っておけばいい。この童にも、その姉にも、ロウが〝何かをしてやる必要〟はない。何かしらの恩があるわけでも、責任があるわけでもないのに。  この童と、その姉が満足に生きてゆけずとも、何ら気にすることはない。堕ちたりとは言え、元天津神。人間(ヒト)に関わってはならないのだ………本来ならば………。  あの老白狐のように、人間の世界と共にある国津神に帰順したわけでもない、今のロウは妖でしかないのだ。
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