― 惨劇の夜 ー

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「これから、凜を秘術で逃がす。『薬』は持っておるな?そなたは凜に追従し、凜を護っておくれ。」 「姫を?………御意に、我が主………いや、元・主よ。」  嵐は凜の喉に手を当てる。その手から、淡い光が放たれる。凜は嵐が『何をしようとしている』のか、わからずにいた。 「……凜、よくお聞きなさい。そなたの声を封じる。そなたが本当に『言霊の能力』を必要とする時まで。生きるのです、凜。そなたが、そなたの『運命』に出逢うまで………。」  嵐が手を放すと、凜の喉には『不思議な紋様』が刻まれていた。凜を声を出そうとしたが、口を開いても声が出なかった。 「姫………ご無礼致します、赦されよ。」  凜の傍らに立った司狼丸が、凜の躰を抱き締めた。凜が慌てる間もなく、不意に、浮遊感に捕らわれる。何もないはずの中空に突如として亀裂が現れた。  その亀裂に吸い込まれる瞬間、破られた扉から何人もの見知らぬ男達が現れた。その男達を率いていたのは、やはり御神薙で………。  そして、男達の一人が放った矢が、嵐の胸を貫いた。だが、嵐は倒れる瞬間、凜を見つめ微笑んだ。  どのみち、この秘術には術者の命が『代償』となる。
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