― 行き倒れの二人 ―

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-京市中 浪士組屯所門前-  市中見廻りから帰営した二人組。すると、門前に一組の男女が倒れていた。 「………どういうことだ、これは。こんなところで『相対死(あいたいじ)に』か?」  そんな状況を見ても動じることなく抑揚のない声と表情の黒髪の男に、短髪の男が答えた。 「いや、これ………二人とも生きてるって。取り敢えず中に運ぶぞ。俺はこっちの男を運ぶから、お前はそっちの女の子、頼むな。」  倒れた男を俵担ぎした短髪の男に、黒髪の男が反論した。 「待て、永倉。氏素性の知れぬものを副長の許可もなく、屯所に入れるなど………」  黒髪の男は難色を示した。この男女の服装を見る限り、到底一般人だとは思えない。少女の方はともかくとしても、男の方は髪は白銀だ。 「斎藤。お前、どんだけ土方さんが好きなワケ?んなこと言ったって、このままにしとけねーだろーが。」  多少、荒っぽいようだが、永倉と呼ばれた短髪の男は人道的なようだ。斎藤と呼ばれた黒髪の男は逡巡していたが、屯所門前で『人死(ひとじ)に』を出すのも憚られたのか、仕方なく少女を担ぎ上げ屯所内に運ぶことにした。
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