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桃花の席の後ろのデスクに並んで座っている女性社員が会話をしていた。桃花は自分の担当アイドルの名前が聞こえるとピクリと身体を反応させるが、後に続いた言葉を耳にすると、小さく、誰にも聞こえないように溜息を吐いた。
「怒らないの?」
「別に…。どう思おうが人の勝手です。」
「私が趣味悪いって言ったら怒鳴ったくせに~。」
「差別だ~。」と言ってコレッタは宙を一回転する。やはり周囲の人間にはコレッタは見えていないようだ。桃花がコレッタの言葉に返事をすると、一瞬、隣の社員がちらりと桃花の方を見た気がした。傍から見れば虚空に向かって一人で喋っている怪しい人間だ。桃花はかぁと顔を赤くさせると、始業チャイムと共に席を立ちあがる。
「愛崎くん、どうかしたかね。」
朝礼を始めようとする部長に声をかけられた。隣の社員どころか、その場にいた全社員の視線が桃花に集まる。「どうしたの?」とコレッタが不思議そうに近付いてくる。
「…お腹が痛いので、ちょっと医務室に行ってきます…。」
+++
「コレッタさん…。お願いですから会社についてくるのやめてください…。」
「え~なんで~?」
休憩室のソファに座って桃花は頭を抱えていた。桃花の申し出にコレッタは不服そうに唇を尖らせる。ふよふよと上や下に浮いて、はては桃花の身体を通り抜けるように暴れる。
「コレッタさん他の人に見えてないようだし、私一人で喋ってて痛い奴だと思われます…。」
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