あらすじ

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あらすじ

目が覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。 制服姿の少女、凛はなにかに導かれるように屋上の縁へと歩いていく。その鼻先からは血がこぼれ、ブラウスとプリーツスカートを汚していく。けれど気にする様子はない。 それもそのはず、彼女の意識はすでになく、立っているのがやっとの状態だったのだから。 ◇ 現代日本では、急激な自殺者増加という問題に直面していた。ここ数年で自殺者数が2倍強、約6万人まで膨れあがったのだ。注目すべきは年齢割合で、すべての年代で増加傾向を示していた。 この事態を重くみた政府は、現場検証や行政解剖をもとに原因究明に乗りだすも手掛かりはつかめなかった。厚生労働省は対策本部を設置し、各都道府県に注意喚起と情報提供を呼びかける。 物語はテロ、感染症、集団催眠を疑う、東京都在住の3人の視点で描かれていく。 東京都警察庁本部では女刑事である(あずさ)が事件捜査に明け暮れ、その恋人で精神科医でもある蒼士(そうし)が大学病院で動向を見守り、二人とは面識のない裕太(ゆうた)は都内の私立高校に通いながらとある噂の真相を調べていた。 だが拡大し続ける自殺者増加は止まらない。 そんな折り、蒼士の働く病院にとある患者が担ぎ込まれることで事態が動き出す。運び込まれたのは冒頭で登場した少女の凛であり、裕太の意中の相手であった。 彼女の治療を受け持つことになった蒼士は感染症をまっさきに疑うも、炎症反応陰性で診断に苦慮する。そんな蒼士に助言をくれたのは幼馴染であり、臨床検査技師でもある依世だった。 凛の体を襲う出血、心電図異常、意識障害。それはとあるビタミンと電解質、そして細菌の頭文字を取った『3つのK』で説明可能だという。 医学常識では考えられない依世の助言に光明を見出した蒼士は『抗菌薬投与』に踏み切る。 だがその治療はやがて、東京都全域に驚くべき変化をもたらしていく――
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