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天狗は一瞬でフェンに近付くと横一線に短剣を薙ぐ。
しかし、その瞬間。基本的に無表情だったフェンの表情が一変する。
眉間に大きく皺を寄せ、目をつり上げる。その表情から読み取れる感情は明らかな怒り。
フェンは目の前に迫る短剣を防御魔法で止めると間髪入れずに右足を振るう。狙いは短剣を握る天狗の右手。
フェンの足の動きに気付いた天狗は、身を引こうとするが間に合わない。勢い良く右手を蹴り上げられ、短剣がすっぽ抜ける。
思わず宙を舞う短剣に目が行ってしまった天狗。慌てて視線を戻すが、眼前には再びフェンの右足が迫っていた。
反応が遅れた天狗の顔面を、フェンの右足が捉える。
ミリーがいる方向とは反対に吹き飛ばされた天狗の体は、地面に激突し土煙で見えなくなる。
その間に静かに着地したフェンは、苛立ちを露にした表情のままミリーに向かって口を開く。
「ミリー・ファルト。おめぇじゃ俺には勝てねぇ……降参してくれねぇか?」
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