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審判の宣言と同時に、会場内が大歓声に包まれる。
フェンは直ぐに歩き出し結界をすり抜けると人混みに消えていく。
一方で、未だ地面に倒れ呼吸を整えているミリーの元へ、使い魔である天狗が歩み寄り無言で手を差し出す。差し出された手を掴み、多少覚束無い足で立ち上がったミリーが天狗に何かを告げると、天狗は無言で
頷き姿が消える。恐らく、自らの世界に戻ったのであろう。
ミリーは、その場で足を動かし体の調子を確認してからゆっくりとした足取りで歩き出す。
ここで漸く救護班が現れるが、ミリーはそれを断り、自らの足で退場して行く。
その背中に観戦席からは、歓声と拍手が送られる。
ミリーの背中が見えなくなると、今まで試合を見る事に集中し黙っていたエルグが口を開く。
「ミリー先輩も強かったけど…フェン先輩は強すぎだよ………ほとんど魔法使ってないし、使い魔も喚んでないし……」
エルグの一人言の様な言葉に、ゼッキとレイは、視線は向けるが口は出さない。しかし、レンだけはエルグに向かって口を開く。
「エルグ、悪いんだけど、意気込みを一言貰えないか?」
その手には、手帳とペンが握られている。レンと目を合わせたエルグは、小さく溜息を吐き出すと答える。
「やれるだけやってみます……」
その言葉を聞いたレンは、そのまま手帳にメモするのであった。
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