冬と春

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今年もこの時期が来た。こたつの上には戦友ともいうべきだろうか、過去問と筆記用具、そして封を切った鏡餅のゴミとみかんの皮。さらにマグカップ半分くらいになってしまったカフェオレが置いてある。春から一緒に頑張って来た机では、この寒さには耐えられそうになかった。「このレースはどこまで走ればいいかわからないから苦しいんだよ」いつか恩師が言っていた言葉を思い出す。より速く、正確に。そう強く念じながら鉛筆で色をつける毎日。今日も寒くなりそうだなと、ふと外を見ると雪が降り出していた。家の窓から見える街路樹の枝に雪がかかって白い花が咲いたように見える。次の春こそは、私の目にはその枝に咲く花が桃色に見えていてほしい。そんなことを思いながら、今日もこのこたつで体を温めている。
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