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うちは貧乏で、お年玉をもらえる親戚もいなかった。
おまけに僕は両親を亡くしたばかりの孤児。
お正月は児童収容施設で過ごしていた。
やる事のない僕は近くの小さい神社でお願いをしてから
下を見ながら境内を散歩した。
お年玉がわりに職員からもらったのは
ドロップやチョコレートが詰め込まれたお菓子袋だけ。
お金を見つけたらそれは神様からのお年玉だと思った。
『神様のお年玉』の代わりに、狛犬の元に座っている
ボロボロの服を着たおじいさんをみつけた。
僕は持っていたお菓子袋からドロップを取り出しておじいさんにあげた。
すると「ワシが見えるのだね?」と話しかけてきた。
おじいさんはうなずきながら、棒状の何かを僕に渡した。
「困った時にこれを使いなさい」と言って消えてしまった。
これは僕が6歳の頃の話。
後に子供のいない親戚に引き取られ育てられた。
今や立派な『アイドルオタク』の高校生。
小遣いでグッズを買い、
自分の推しがテレビに出る時は必ず録画をして観る。
『アイドルオタク』とはいえ、できるのはこれくらい。
『追っかけ』なんて“両親”が心配する行動はできなかった。
ある時、隣の街で複数のアイドルが集まるジョイントライブが決定。
会場近くでライブ・ビューイングも開催。
チケットが取れなくても、ここには参加したかった。
彼女達のそばで応援するのが夢だったから。
そんな時に思い出したのが、おじいさんからもらった『アレ』だった。
押し入れの奥にある段ボール箱を開けるとすぐに見つかった。
15㎝程の長さの黒い棒状で、先端に白いボタンが付いている。
ボタンを押すと先端から20㎝くらいの長さの光が辺りを照らし出した。
ペンライトだ!と僕は思った。
そして今日。
“両親”を説得して僕はライブ・ビューイング会場にきた。
同じ想いのファンが集まりその熱気は徐々に高まっている。
開演時間ちょうどにステージは始まった。
僕はペンライトのスイッチを入れ、皆と同時にそれを振り上げる…
その夜の臨時ニュース。
「本日未明、○○市の県民スタジアムの駐車場で開催された
アイドルのライブ・ビューイング会場にて棒状の武器を振り回した男が逮捕されました」
「その武器はペンライトに似た形状で、スイッチを入れるとレーザー光線が発射され…」
「…近くにいた男性は“まるで映画に出てくる“ライトセーバー”のようだった”と…」
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