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9話
グラウンドを駆け回り、ボールを追う男たちを眺めていた。頭の上には真夏の太陽。皮膚がじりじりと焼ける音が聞こえるようだった。
サッカーは好きだが、この中に混ざりたいとは思わない。早く涼しい屋内に移動したい。冷たい炭酸ジュースが飲みたい。そんな欲求しか沸いてこない。
どいつもこいつも、マゾだ。もちろん、兄貴を含めて。
「ヒデ」
人工芝から外れたトラック部分に腰を下ろしていた俺に、兄貴が駆け寄ってきた。
「暑いだろ。これ飲め」
濡れたドリンクボトルを差し出してきたが、「いい」と言って腰を上げる。
「なんか炭酸飲みてえ。自販機探してくる」
踵を返して歩き出す。兄貴がもう一度「ヒデ」と呼び止めた。
「もうちょっとで終わるから」
「はいはい、待ってますよ」
俺の限界が近いことに気づいていたらしい。
構ってやれない、と言われていた通り、帰って早々に練習が待ち受けていて、寮に荷物を置くとすぐにサッカー場に移動した。
一瞬だけ見た寮の部屋は二段ベッドの二人部屋だった。同室の男が一人、いるのだ。
そいつだな、と予感があった。
兄貴の身体があんなふうにエロくなったのは、そいつのせいだ。
同室で、毎日やりまくりかよ。
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