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息を吸う。そして、止める。たっぷりと中身の入ったコーラの缶を、握り締めた。ベコッと音がして凹み、冷たいコーラが右手を濡らす。
「兄弟でヤッてんの?」
「あんた、兄貴とヤッたのか?」
質問に質問で返し、殴りかかりたいのを堪えてひたすら右手に力を込める。
「やってるよ」
現在進行形の言い方で答えると、男が勝ち誇った笑みを浮かべた。
「あいつ、めっちゃエロいよな」
コーラの缶を地面に叩きつけ、殴りかかっていた。男が笑顔のままで俺の拳を避け、「駄目だな」と鼻で笑う。
「腰が入ってない。なまっちろい肌で薄っぺらい体して、お前さては引きこもりだな」
「うるせえ、殴らせろ!」
飛びかかる俺を受け止めて、男が胸倉を乱暴につかんできた。脚が、地面から浮く。持ち上げられ、自販機に背中がぶつかった。
「お前も抱いてやろうか」
鼻先で男が言った。汗の匂い。男の体臭。吐き気がした。
「兄弟まとめて相手してやるよ」
にやけた男の顔面に、唾を飛ばす。男が目を閉じて、眉間にシワを寄せた。俺のTシャツで顔面を拭うと、「またあとでな」と言い置いて去っていった。
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