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「……ヒデちゃん、イクときの顔、すごい可愛い」
はあはあ言う俺の口に、貴文が吸いついてきた。
「もう一回しようか?」
なんなんだ、こいつは。うっすら開けた目に、貴文の余裕の表情が映った。
「ヒデ」
声がしたほうを見た。兄貴が立っていた。風呂上りのさっぱりした顔をしている。が、顔面は蒼白でふるふると子犬のように震えていた。戸が開けっぱなしで、むっとした熱気が入ってくる。
「兄貴、いつから、そこに……」
息も絶え絶えに訊いた。
「貴文がイク数秒前」
また微妙なところから……。慌てる気にもならない。だって俺は押し倒された被害者だ。貴文が俺を襲ったのだ。
「兄貴、なんか誤解してない? 言っとくけど俺はこいつに犯されたんだ。頭ぶつけて気絶してる間に馬乗りになってこれだぞ?」
「説得力ねえよ。お前、ノリノリだったくせに……。くそ、貴文、抜けよ!」
貴文が名残惜しそうに俺から退いた。
「あー……っと、兄貴。何回も言うけど俺は悪く」
起き上がろうとする俺の頬に、兄貴の拳がめり込んだ。
俺は再び昏倒した。
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