2話

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 それに気づいてから俺は春奈を避けるようになった。春奈は突然冷たくなった俺に戸惑いつつ、健気に「彼女」を演じようとした。  夏休みが始まった。まだ俺たちの関係は続いていたが、それは恋人同士と呼べるようなものじゃなかった。冷めていた。  触れようとすらしなくなった俺に、春奈は終わりを意識したのだろう。夏休みも終盤に差しかかった頃、電話があった。会いたいと言われ、暑い中指定された近所の公園にわざわざ足を運んだ。炎天下でしょうもない話をする春奈に、俺は不機嫌な視線を投げた。次第に静かになった春奈は、駄目元という感じでやがてこう言った。 「秀明のうち、行ってもいい?」  俺は少し迷った後で頷いた。春奈はホッとした顔で笑った。兄貴に惚れているせいか、この女は俺の家に来たがらなかった。鉢合わせになるのが気まずいのだろう。  家に向かう途中、ドラッグストアに寄ってコンドームを買った。春奈は何も言わなかった。あからさまな下心を見せておいて、それでもついてきた。  兄貴が好きなくせに。内心で激しく嫌悪した。  自宅につくと、二階の俺の部屋に上がった。春奈は家に誰もいないのか、そればかり気になるようでキョロキョロしながら「お母さんは? お兄さんは?」と訊いた。 「共働きだから五時まで誰も来ねえよ。兄貴も部活だろ」     
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