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兄貴はち、と舌打ちをして「二階行けよ」と言った。
「下にしかクーラーねえからここにいるんだろ。どうでもいいけど早く閉めろ。アチィんだよ」
兄貴はぶつぶつ言いながらドアを閉めた。ちら、とそっちを見て、初めて兄貴の背後にもう一人いることに気づいた。兄貴の背中からひょこっと顔を出して、男が言った。細長い奴だ。
「こんにちは、弟?」
兄貴の友達らしい。初めて見る顔だ。俺は肯定も否定もせずに画面に視線を戻す。
「ミッチーに似てるね」
ミッチー! なんて馬鹿げたあだ名で呼ばせてるんだ。俺はこれみよがしに吹き出した。が、二人とも俺を無視した。
「ええ? 似てないだろ、よく見ろよ。俺のがいい男じゃん」
「うん、まあ。ミッチーのほうが男らしいかな」
そうだろ、と兄貴は嬉しそうに答えた。兄貴は何故か、どんなことでも俺より上じゃないと気がすまない。
「そこ座ってろ。アイス食うだろ?」
「うん」
細長い男が座布団の上にちょこん、と行儀よく座った。
「弟君、名前は?」
「秀明」
「じゃあヒデちゃんだ。僕は貴文っていうんだ。よろしくね」
「はあ?」
画面から目を離さずに馬鹿にした声を出した。
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