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何か、とても粘着質な音がさっきから聞こえている。ぐちゃぐちゃにちゃにちゃという音。それに混じってパンパンという音も。これはなんの音なんだ!
それはしばらく続いた。喘ぎ続ける貴文と、腰を振り続ける兄貴。俺は身動きが取れなかった。固まって動けなかった。ただそのわけのわからない二人の行為を、見たくもないのに見続けていた。
「やっ、あっ、イク、イクーーーー……ッ!」
貴文が声を上げた。耳がキーンとなるくらい、でかい声で「イク」と絶叫した貴文の体がビクンと跳ねた。つられて俺も大きく跳ねた。兄貴がくぐもった呻きを吐き出した。二人の動きがようやく止んだ。
「あー……、疲れた」
兄貴が言った。
「練習後にセックスってやっぱキツイわ」
のそのそと体を起こした。振り返る。目が合った。俺は慌ててテレビに向き直った。ゲームオーバーの文字が、相変わらずそこにある。
「ヒデ、ティッシュ取って」
「ティ、ティッシュ!? ああ、ティッシュね、うん、これね」
俺の足元に箱が転がっている。こんなとこに置いておくなよ。震える手で掴むと、後ろを見ないようにして、ティッシュの箱を差し出した。
「ミッチー、すっごく良かったよ。キスして」
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