1話

9/12
1496人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
 布越しに擦られて出してしまいそうになる。慌てて貴文の手を掴んだ。 「やめろよ、こんなこと! お前、お前も兄貴も、変だ! この、変態野郎!」  拳を貴文の顔面に叩きつけようとした。頼りない顔をしたこいつが、鼻血を出してぶっ倒れるところを想像したのに、何故か腕を取られ、逆に押さえつけられていた。 「いて、いてててて、イテェよ、離せ!」 「ごめんね、条件反射でつい……」  貴文が笑って俺を解放した。肩が外れるかと思った。ずりずりと畳の上を後退する俺を、貴文が笑って見ている。 「僕のうち、合気道の道場やってるから」 「聞いてねえし!」 「あ、萎えちゃったね」  俺の股間を指差して言った。当たり前だ。殴ってすっきりするはずが、何故か技を決められた。 「でも、やりたくない?」  俺は貴文を無視して、ゲームを再開する。 「ヒデちゃんて彼女いるの?」 「うるせえな、あんたに関係ねえよ」 「関係あるよ。気になるんだもん」  ドキッとした。思わず振り向いてから、しまった、と思った。貴文が股を開いて俺を上目遣いで見ている。 「ここに、入れてみない? 気持ちいいよ」 「だ、誰が! 早く服着ろ、変態!」  目を覆いたい。こんな男がこの世に存在したなんて。神はいないのか。     
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!