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3話
腹の上に何か乗っている。跳ねるそれは、人間。
春奈?
顔がよく見えない。目を凝らす。
ぼやけていて見えない。
俺の腹の上でリズムを取る人間は限られている。春奈しかいない。でもあいつとは別れた。別れたはずだ。いや、どうだったか。
そうだ、貴文とかいう奴が、確か腹の上で跳ねていたことがある。
貴文って誰だっけ?
頭がすっきりしない。記憶があやふやだ。それに、眠い。
俺は眠りたかった。
眠るにはこいつが邪魔だ。腹の上から退かそうと体を起こす。腕を取った。掴んだ腕は、春奈の細い腕じゃない。ハッとした。
兄貴。
そこで目が覚めた。
夢。すぐに気づいて冷や汗が出た。後ろめたさに頭を抱えた。
男とヤル夢を見ること自体、病気に近いというのに、相手が兄貴だなんて。
完璧に病んでいる。
いや、違う。兄貴とヤる夢を見たからといって、兄貴とヤリたいわけじゃない。日中残滓というやつだ。兄貴のアレをしごいてやったり、あそこに指を突っ込んだり、イクときの顔を見たりしたせいだ。
羅列してみると、自分のしでかしたことに激しく疑問を抱いた。
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