1492人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
4話
夜になった。コンビニで仕入れたヒレカツ弁当を食べながら、一階の茶の間でテレビを眺めていた。NHKの真面目そうなアナウンサーが淡々と喋っている。
兄貴は外で食事を済ませたらしく、帰ってからずっと自室に閉じこもっている。元々積極的に会話をする兄弟じゃなかった。だからこういう状態は慣れている。特に喧嘩をしているという険悪なムードでもない。
ただ、ぎこちない空気が家中に漂っていた。
今朝見た夢と、昼間の出来事を交互に思い浮かべた。
俺の腹の上で跳ねていた兄貴。腕を舐めたときに上げた、エロ臭い声。都合よく混同させ、一人で悶々とした。
気づいたら股間をしごいていた。
我に返っても、手を止めなかった。
「兄貴……っ」
小さく吼えて、果てた。息を荒げ、手のひらを見た。へばりついた精液。後悔は、なかった。不思議な話だが、清々しかった。
ティッシュで拭って立ち上がる。茶の間を出て、足音を殺して二階に上がった。
兄貴の部屋の前で、立ち止まる。ドアにそっと耳を当てた。確かにいる。気配がするし、布が擦れる音も聞こえる。
ギシ、とベッドが軋む音。ギ、ギ、とスプリングが小刻みに震えている。
最初のコメントを投稿しよう!