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第1章 バイト帰り【青年語り】
ガソリンスタンドの隅にたまった枯葉を、強い北風がまき散らしている。
もうすぐ早朝バイトが終わる時間だ。
この時期の給油サービスは、手がかじかんで感覚がなくなる。
制服を脱ぎ黒いダウンジャケットを羽織る。
ポケットに手を入れ指先を温めながら、足でバイト先の裏口のドアを閉めた。
『バッタン』
いつもより少し大きな音に感じた。
駅に向かう途中、母さんからLINEが来た。
「おばあちゃんとこ寄って、足の具合見てきて。」
隣町には、一人暮らしをしているばあちゃんがいる。
年末に階段で転んで足を怪我してしまったらしい。
昔はよく行ったばあちゃんのうちに、かれこれもう3年くらい俺は行っていない。
何となく、自然に足が向かなくなった。
別に、嫌いになったわけでもなかったけれど、自然にそうなっていった。
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