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第2章 ばあちゃんち【青年語り】
今日は、午前の大学の講義は休講だったから、バイトを終えすぐばあちゃんちに向かった。
インターホンを鳴らすと、玄関にばあちゃんが出てきた。
久しぶりに会ったが、3年前とあまり変わっていないように見えた。
服も同じ感じで、髪も白く短いまま。時が止まっているように見えた。
ただ、足だけが違っていた。痛そうに引きずっている。
ばあちゃんは、嬉しそうに俺に向かっていろんな話をした。
母さんが先週来て作った煮物がうまかったとか、
俺が小さい頃、裏庭でひたすら虫を捕まえて遊んでいた話しとか、
近所の気難しいお爺さんの話とか、いろいろだった。
足の痛みは少しずつ和らいでいると、足をさすりながらばあちゃんは言った。
三日後には、母さんがまたばあちゃんちに来るらしい。
何か俺にできることがないかをばあちゃんに聞いた。
洗面所の上の戸棚のボックスティッシュを取ってほしいと言ったので、
俺は一応2箱取り、ばあちゃんに渡した。
帰り際、もう21歳になる俺に、お年玉を渡そうとしてきた。
年金暮らしで、余裕がないのがわかっているから、気持ちだけ受け取ると言ったけれど、
どうしてもと言って聞かなくて、結局ティッシュに包まれた2千円を受け取った。
「これで栄養あるおいしいお昼ご飯でも食べて。」
昼前に孫が来たのに、食事を振舞えなかったのがとても残念だったようだった。
たいした話を俺はできなかったが、ばあちゃんの家を後にした。
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