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はぁ、はぁ……。
よく、城を走り回ってはメイド長からお小言をもらっていたスピカだけれど、長距離には慣れてないせいで、逃亡するのはかなりきつかった。
それでも、スピカは限界まで走った。
足がもつれて、もう無理だと思うまで駆け抜けた今は、しばらく声だって出せそうにない。
何度も息を吸って吐いてを繰り返し、ようやく顔を上げて辺りを見渡してみると、まったく見覚えのない場所だった。
ディアナの隠れ家を脱出して外に出てみれば、家の周りは白いもやのようなものに囲まれていた。
「まるで、雲の中に迷い込んじゃったみたい」
それでも、
「とにかく、逃げなきゃ」
と、勘に任せて走り出したスピカだった。
それから、建物を背中にしてひたすら進んでいると、突然目の前が晴れて、いきなりありふれた町の風景が現れた。
驚いて振り返れば、やはり、ありふれた森の景色があるだけだった。
それが、ディアナの術なのだろうと思ったのだけど、初めて触れた幻術にスピカは気味が悪くなり、行き先も考えずに遠ざかることだけに必死になっていた。
なので、現在、ここがどこなのかなんて、皆目見当もつかないスピカだ。
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