☆3☆ スピカ咆える

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[リスナーの皆さん、しっかりと聴いていただけたでしょうか。スピカ姫の言葉が届きましたか? 知っている方もいるでしょうが、私は紅の国が出身地です。いずれ国を背負って立つ姫様が、こんな風に想ってくれている。正直、やっていることは無茶苦茶ですよ。けれど、楽な道を蹴ってまで大切にしてくれているのだから、これほど誇りに思うことはないでしょう] ジンに目一杯の後押しをしてもらったスピカは、覚悟を決める。 スピカは王家に生まれただけで、他は何もない普通の女の子だ。 それでも、期待を寄せてくれている人のために、それらに見合う人物になりたいと思った。 [そろそろ、この幸せな時間もおしまいとなります。では、最後に一言。スピカ姫、お願いします] [はい。この度は、こうして他国までお騒がせして申し訳なく思っています。全て私のわがままだと認識していますが、考えなしに始めたことではありません。私は、いずれ、必ず帰ります。その時には、どんな非難でも受け入れるつもりでいます。ですから、今しばらくは帰るつもりはありません] それは、聞く人が聴けば、昨日のミルへの反論だとわかる言葉選びだった。 [それでは、また明日。この時間にお会いしましょう] こうして、スピカのラジオ出演が幕を閉じた。  * * * 「何よ、これは。一体、あの子は何を考えているの!?」 叫んだのは、片付いたばかりの部屋でラジオを聴いていたディアナだ。 「いいんじゃないか。おかけで、アザミ中を敵に回さなくても済みそうだろ」 一緒に耳を傾けていたフィンクスは、愉快そうに笑っていた。
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