IF

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タイプがまったく違うのに、よく喧嘩もせず一緒に遊べていたものだ。 ――仲よく一緒に? 稲荷山の脳裏に、火花のように記憶の一片が閃いた。 それはかすかではあったが、胸を苦く刺し、じわりと広がった。 嫌な感覚だった。 ――……、上履き必死に探してんの、ちょーウケる。 森が指さして笑い、塚本が躊躇いながらも笑い――自分も、笑う。 誰かが――半べそをかきながら、上履きを探し回っていて―― (なんだ、この記憶……なんの) 塚本は森の暴言に、表情を強ばらせた。 「拓哉、本当に忘れたのか? それとも、悪いことをしたっていう自覚は一応あるのか?」 「なっ――」 よほど意外だったのだろう。 森は蒼白になり、唇をぴくぴくと震わせた。 塚本はそれ以上言葉を継ぐことはしなかったが、どんよりした目で森を睨んでいる。 空気が重く張り詰めた途端、個室の扉がノックされた。 その拍子抜けするほど軽い音に森は我に返り、「どうぞー」といつもの愛想のよい調子で返答した。 「失礼します」 入ってきたのは、店員と同じく黒地に黄色い満月が描かれたシャツを着た、同年代の男性だった。 「『玄兎』の店長を務めさせていただいております、佐藤と申します」 男性は目がなくなりそうな笑顔で頭を下げた。 「さきほどはお料理をお褒めいただいたそうで、大変光栄です。僭越ながら、ご挨拶に参りました」
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