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「そうだけど、非常勤講師だし……」 そこへ店員がビールを運んできて、森は「じゃあハカセにお注ぎしますよ」と瓶を手に取った。 稲荷山はそれ以上主張せず、返礼として同じように森と塚本に注いだ。 3人の手にグラスが渡ると、森が音頭を取った。 「ちょっと遅い新年会兼小学校同窓会の開催を祝して、かんぱーい」 「乾杯」 「乾杯」 森からフェイスブックを通じて連絡があったのが1年ほど前で、彼を通じて塚本ともつながった。 そのうち3人で飲もうという話は出ていたものの、言い出しっぺの森が多忙でなかなか実現しなかった。 昔もこんなふうだったな、と稲荷山は思った。 森が提案し、塚本と自分はそれに乗る。 彼が動かなければ、何も動かない。 コース料理で運ばれてきたのはサラダやポテトフライ、唐揚げ、水炊きといったいわゆる居酒屋メニューだが、素材が上質なのか、なかなかおいしかった。 「そういえばさ、小6のときお年玉で買ったアレ、面白かったよなあ」 何杯かビールのグラスを空け、学校関連の思い出話に花が咲いたあと、上機嫌に森が言い出した。 「アレ?」 塚本はほとんど顔色は変わっていないが、手元には焼酎の空きグラスがいくつかある。「ゲームだよ、ほら、殺人事件の。当時すっげえはやったじゃん」 稲荷山は薄めのレモンサワーをちびちびやりながら、「ああ、皆で買ったやつ?」と思い出した。 かなり売れた作品で、その後ドラマ化も舞台化もされ、続編も作られた。
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