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「そーそ! 全員お年玉で買って、誰が一番早く真犯人わかるか競争したじゃん」 「ああ……やったなあ」 塚本も思い出したらしい。 「アレ、なんてゲームだっけなあ」 森は首を捻った。 「月のナントカ、だっけか? 最近どうも記憶力が」 「『月光の囁き』だったかな」 「それだ! さすがハカセ」 「確か、山奥の村で殺人事件が起きて、主人公は大学生で、彼女がいて――」 稲荷山は、記憶を辿った。 「夏休みのバイトでペンションの管理人をやってて、客が怪しい連中で、夜中に事件が起こる」 「おーそうだったそうだった」 「死体、グロかったな」 塚本がぼそっと言う。 「あのバラバラ死体か?」 森はもう手酌でビールを注いでいる。 「ああ怖かったな、あれは」 当時のゲームグラフィックはさほどリアルではなかったはずだが、何しろ子どもだったので、BGMの効果もあってそうとう怖かった覚えがある。 死体グロかったな、と学校で進捗状況を話し合うときに白状すると、「なんだよハカセ、あんなのが怖いのかよ、ビビリだなあ」と森が言い、塚本も同調していたように思うが、あれは小学生男子らしい虚勢だったのかもしれない。 そういえば――俺も怖かったよ、と言ったやつがいなかっただろうか? 自分だけではなかった、とほっとしたような覚えがある。 「真犯人誰だっけ?」
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