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森は塚本に尋ねた。 「宿泊客の、山本とか藤本とかそんな名前」 「あれ? 彼女が犯人じゃなかった?」 稲荷山が思わず口に出すと、2人に笑われた。 「お前、それはバッドエンドシナリオだよ。真相ルート、見てないのかよ?」 森に言われて、また記憶をたぐる。 「えーっと、真犯人がわからないと、1人ずつ殺されてって自分も死んじゃう皆殺しルートになるんだったよな?」 「そうそう、何度やってもそのルートになっちまって、攻略むずかったなー」 「最後、主人公だけ生き残ってたけど、実は恋人が犯人で、彼女に殺されるっていう結末は覚えてるんだけど」 「それ、推理の分岐で出るバッドルートだな」 「そうか、そうだったかな……」 自力でクリアした、という記憶が稲荷山にはなかった。 頭にはそこそこ自信があっただけに、ショックだったように思う。 「で、誰が一番最初に真犯人わかったんだっけ?」 「えー……」 塚本は目を泳がせた。 「……誰だっけ」 「――俺だよ」 森は店員を呼ぶスイッチを引き寄せ、「なんか頼むか?」と2人にメニューを開いて見せた。
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