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「森じゃなくて?」 「拓哉はそのあとだ。それは覚えてる」 店員が運んできた新たなグラスを受け取り、塚本は水面をじっと見た。 「最初に犯人がわかったやつがいて、俺はそいつから聞いたんだ。で、そのあとで拓哉が、自分が一番乗りだって言うから、違うぞって、そしたら怒って――」 ――オレ、犯人わかったぜ。競争はやっぱオレの勝ちだな! ――え? オレ……から教わったけど。 ――んなわけねえだろ、あいつにそんなことできるわけない。 ――いや、だけど…… ――うるせえなブタ。またお前のことブタンて呼ぶぞ。 「あ」 稲荷山の記憶の靄から、何かが姿を現しかけていた。 「もう一人……」 もう一人、誰かが――いたのではないか? 「塚本、そいつの名前、覚えてる?」 彼は眉を寄せ、「思い出せない」と呟いた。 2人して思い出せないというのは、どういうわけだろう。 あまり親しくはなかったのだろうか。 ただのクラスメイトか? しかし、同じゲームを買った「もう一人」の存在が、にわかに意識されてきた。 あのころ自分たちは、4人組だった――のか? 双方とも黙り込んでいると、個室の扉が開いて森が戻ってきた。 「いやあ、うっかり隣の部屋入るとこだったわ。女の子の声がしてさ」 「あのさ、森、ゲーム仲間、もう一人いなかったか?」 森は「いいや?」と顎を引いた。 「そりゃ、そのゲーム買ったやつはほかにもいたろうよ」
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