揺さぶり

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宮内課長とは、次第に目の合う頻度が落ちたように感じた。 反比例するように、自分の中に燻る依存心が開かれて行くのが解ったが、死にもの狂いで抑え、誰にも悟られないよう努めた。 人生は長い。今なら戻って、元通り上司と部下として、良い関係を築けるかもしれない。 フロアの中、適切な距離感を保っているこの頃、不意に十川さんの存在が思い出された。 この同じフロアで、執着にも似た眼差しを視界の隅で拾っていたのだ。 今とは逆の立場で── 関係を壊すことは望まなかった。それ程には彼に興味がなかったから、気にすることを止めた。 そうすれば元に戻れた。 それは課長の想いに繋がったようで、成程とひとり納得した。 結局、それ程にはわたしに興味がないんだろう。 歩く姿は確認出来るが、足音は確認出来ない、十数メートル先の後頭部を見つめていた。 滲んだ滴を周囲に知られないように、踵を返して廊下へ逃げ出した。 誰も居ない静まった空間の中、指先で拭った。 涙を流したから何だと言うんだ。 もう、忘れなくてはいけない。
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