東京タワー外階段400段目

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目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。 やたら赤い…。頭上に重なる赤い鉄骨。 傍らには…美しい夜景。広がるTokyo…と、警備員…。 「お客さん、大丈夫?自力で降りられる?」 確か、彼女の輝(ヒカル)と一緒に降りてたはずなのに…? プロポーズしようとして…したっけ?なぜ1人、なぜ暗くなってる…? 手には小さな組木細工のような箱…。 電話しても繋がらない彼女。 同僚も友達も知らないという僕の彼女、部屋を訪ねるとずっと空き家だという…。 夢でも見てたのかな? 2年目のあの日が来た…、まだ部屋に飾ってある小さな箱。たったひとつ、彼女が夢じゃないと思える手がかり…。忘れられない…。 モザイクのような美しいキューブをいじっているとぱかっと開いた…。 気づくと朝だった。 家が広い。 木目が暖かく片付いてる…、リビングらしき場所には赤ちゃんを抱いた輝がいた。 「おはようパパ!早くしないと遅刻しちゃうよ」 パパ?パパ? 会社は変わらない。仕事は単調。 日付もあってる。 ただ俺は広くなった家に彼女と赤ちゃんと3人で住んでいるらしい…。 記憶喪失?情報操作? 一体何が起こってるんだ! 俺は彼女に聞くことにした、、、 「なぁ、この箱…なに?」 「これなに?おもちゃ?」 彼女はなにも知らないのか…。 箱の謎、記憶にない3人家族としての2年間…、そして3人家族で過ごしたその後の3年…、ふつうに過ごした日常で、あの箱だけが違和感だった。 5年目のあの日が来た。 家族3人、東京タワーに登ろうと誘った。 あの箱とともに。 東京タワー、外階段400段目…。 1人先を行く彼女が振り向いた。 「あの箱のこと、思い出したよ…」 俺の抜け落ちた2年間は…。
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