最悪な旦那様(仮)

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「取り敢えず乗れ」 面倒臭いと言う感じ丸出しな上 顎で車を指しながら目で早くしろと言ってくる 見ず知らずの、しかもそんな最悪な人間の車にホイホイ乗る奴がどこにいんの? バカにしてんのかと、だんだんイライラが恐怖心を飲み込んでいく。 『乗るわけないじゃん』 もうこの場には居たくないと掴んだままだった繭子の腕を引こうとした時だった。 突然その手を掴まれて、強引に視界を真っ黒な車中へと変えられる。 放り込まれた勢いで肩がドアにぶつかり、薄く鈍い痛みが広がる。 『、ったぁ…何すんのよ!』 「黙ってろ、出せ」 既に隣に座って居た男は、運転手に向かって行き先を告げている。 『ちょっと待ってよ!何なの!?あ、あたし降りる…!』 冗談じゃない、これって誘拐じゃん!! このまま連れてかれたらあたし何されるか… 悲惨な未来を予想してしまって若干パニックになる。 急いでドアを開けようとした手は、隣から伸びてきた腕にあっさりと捕まった。 「黙ってろって言ったよな」 見下した視線だけをあたしに向けて、冷たい低音が車内に響く。 知らない奴に無理矢理車に乗せられて 何処かもわからない所に連れて行かれそうなのに黙ってろ? そんなの無理に決まってんでしょ! でも そんなあたしを黙らせるのには充分な コイツの一言で 頭が真っ白になった。 「俺はお前の結婚相手だ」 鈍い、痛みが増した気がした。
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