炬燵輪舞

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「スタインウェイが良いの?」  花栄は思い込んだら突っ走る所がある。  もう今年のクリスマスはピアノを買ってやる気になっていて、志信にそう問い掛けたら志信は「バカなの?」と素で返して来た。 「ちゅ……中古なら……行けるよ? 新品は……ごめん」 「そう言う話じゃない」 「本当はさ、指輪とかあげようかと思ったんだけど……お前仕事柄そう言うの付けないだろうし、その代わりと言っては何だけどさ……欲しいヤツ、教えてよ」 「要らないって言ってるだろ」 「遠慮すんなって! これでもちゃんと貯金してんだから!」 「じゃあ、黙ってその金口座に貯めとけ!」 「なっ……そんな言い方ないだろっ?」 「もう何も要らん! 煩い、早く仕事に行け!」  そう言えば、あれからずっと機嫌が悪いような気がする。  花栄はそう思い当たって、首を傾げた。  流石に数百万の買い物を素人の自分だけでするわけにも行かず、去年のクリスマスもお互い忙しくて顔すら真面に会わせる事が出来ずに、仕事に行く前にテーブルの上に買っておいたプレゼントを置いて出掛けた。
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