炬燵輪舞

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 炬燵の温度が高いのか、志信は額に薄ら汗をかいている。  揺すって起こそうとすると、気配に気付いたのか薄ら双眸を開いた。 「ハナ……?」 「迎えに来た。帰るよ……」 「うぅん……」  志信は愚図る子供の様に顔を顰め、炬燵の布団に潜り込んでしまった。 「志信っ! 帰るってば!」 「いやだっ……」 「い、嫌って何だよ!? お前、何怒ってんだよ? 俺全然わかんねぇんだけど?」  炬燵布団の上からガッツリ肩を掴んだ花栄は、潜り込んだ志信の顔を見ようと炬燵布団を剥ぎ取る。細い肩に頼りない首筋、なのに炬燵の熱のせいなのかほんのり色付くその白い項は妙に色気があった。  横になった志信に覆い被さり、早春の梅の蕾の様に色付いた項に吸い付く。  濡れて張り付いた襟足の細い毛が、余計にそそられる。 「こっち向いて、志信」 「ハ……ナ……」 「うん? キスも嫌?」 「や……じゃ、ない……」  こちらへと躰を倒した志信の上気した頬に口付けて、花栄は確かめる様に眸の奥を覗いた後、薄い二枚の花弁に唇を押し当てた。  志信が着ているYシャツのボタンを慣れた手つきで外して行く。  暖かい肌に掌が吸い付く様な感覚に、花栄は腰の疼きを堪えつつキスを貪った。  これ以上は、と志信の片手がストップをかける。 「何で別れるって言ったの? 志信」 「……」 「……炬燵、欲しい?」 「うん……」 「何で? 理由教えて……」  暫く躊躇い、志信は花栄の首に両手を回して引き寄せる。  耳朶に唇を押し当てる様にして、か細く囁かれた言葉は、甘い熱を持って耳孔を焦がした。  炬燵があったらお前が欲情するから――――。
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