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本棚に追加「あん時は、終わったと思ったなぁ……」
それでも諦めきれない花栄は志信を探したが、ピアノ教室にも通い慣れたバーにも志信の姿は無かった。
数少ない友達の所にも身を寄せておらず、本当に居場所の検討が付かなくなって来た頃、志信を連れて帰って来たのは義父の花緒だった。
貯金の為に最低限の生活が出来るボロアパートの一室には、炬燵と小さなテレビがあるだけで、仕事を始めたばかりの花栄と夜は殆ど家にいない志信は、朝方の数時間だけをシングルの狭い布団に身を寄せて暮らす日々。
そのボロアパートのインターフォンが鳴ったのは、寒い寒い冬の、大雪が降った日だった。
「喧嘩に巻き込まれたみたいで……警察から俺の所に連絡があったんだ」
花緒はそう言って、バツが悪そうに眦を下げた。
ただ黙って不貞腐れた様に俯いている志信は、口元に紅い痣が出来ていた。
色白の志信の頬には鮮やか過ぎるその傷を見てカッと頭に血が上り、平手で志信をぶっ叩く。
細い肢体を大きく揺らした志信は、軽く玄関先の壁に衝突してそのままズルズルと座り込んだ。
「は、花栄っ!」
「父さんは黙ってて! 志信、お前何やってんだよ! 探したんだぞ!」
襟刳りを掴んで問い質す。
か細く「ごめん」と呟いた志信は、絞り出す様に眦から涙を零した。
花緒の手前もあり、それ以上問い詰める事はしなかったけれど「落ち着いてちゃんと話を聞いてやれ」と花緒に言われて、掌に残るジンとした痺れに少し後悔する。

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