お得すぎる福袋

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「――ハァ…総額一万円かぁ……」  正月二日、叔父の家からの帰り道、俺は往来の真ん中で深い溜息を吐いていた。  年が明けてからというもの、俺は父方・母方双方の祖父母をはじめ、ありとあらゆる親戚のもとを廻ってお年玉をそこはかとなくねだったが、皆、くれるのはわずか千円ほどのもので、すべて足し上げてもそれくらいにしかならなかったのだ。  ま、うちは一族郎党、そろって慎ましやかに生活しているまさに〝ザ・庶民〟な上、普段、それほど盛んに交流しているわけでもないので、こんな時ばかりやって来る現金な親戚の子に大金などあげる義理はないのもわからなくはない。  だが、さりとてこの一年に一度しかないビッグチャンス、エリート校でもないのにやたらと校則が厳しく、バイト禁止で小遣い以外収入源のない高校生にとっては死活問題である。 「この一万を元手に何か儲ける方法はないものか……パチンコはスルだけだし、競馬や競輪は年齢的にまだアウトだしなあ……(いや、パチンコも本来アウトだけど…)」  それほど期待していなかったとはいえ、予想を大幅に下回る今年のお年玉の額に、そんな今後の対策をあれこれ考えながら、トボトボと歩いていた時のことだった。 「……………ん? なんだ?」  通りかかった店の前に、道まではみ出すほどの黒山の人だかりができていたのだ。  そのほぼすべてが女性であるが、女子大生くらいの若いものから、OL、主婦、もっと高齢なご婦人までその層は様々だ。  そのわいわいと賑やかな客達の頭越しに見上げると、こじんまりとした店舗の壁には「アジアン・アウトレット」という看板が掲げられている。  また、人垣の隙間からガラス張りの入口の向こうを覗けば、スタイリッシュなホワイトの棚にバッグやらポーチやらが悠然と並び、店内に立つマネキンは高級そうな女性ものの衣服で着飾られている。  どうやら、高級ブランドのアウトレット商品を扱っている店であるらしい。 「安いヨ! 安いヨ! 超お得ダヨ! 値段の10倍以上のモノが入ってる福袋ダヨ~!」  よく見れば、中華系と思しき妙に色気のあるお姉さんが、先を争う人混みに揉まれながら、拙い日本語を使って店頭で呼び込みをしている。
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