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それは、5㎝四方の透明なビニール袋に、真っ白い粉の入ってるものだった。しかもそれが6袋、底一面に整然と敷き詰められている。
「えっと、先ずは落ち着いて、この状況についてじっくり考えてみよう………」
俺は目頭を押さえてマッサージしながら、慌てず焦らず、今、目の前で起きた出来事を冷静に考察してみようとする。
「俺の目がどうかしてるか、まだベッドの中で初夢でも見て寝惚けてないんだとしたら…………これってガチでヤバイやつだろ!?」
だが、この俄かには信じがたいようなトンデモない出来事に、とてもじゃないが冷静にいることなどできなかった。俺は思わず叫び声を上げると、まるでお化けでも見たかのようにバッグから跳び退く。
無論、こうしたものと無縁な俺には、それが覚せい剤なのか麻薬なのか詳しいことはわからないが、ともかくもこの絵面はテレビなどで見たことのあるアレに間違いない。
「あ、そうだ…………」
不意に手に持ったスマホのことを思い出した俺は、この〝白い粉〟についてちょっと調べてみることにした。
台所に行ってハカリを持って来ると、バッグから小袋を取り出して総重量を測ってみる。そして、ネットを駆使してあれこれまた検索してみるに、どうやら一番安い種類の〝薬〟だったと仮定しても、末端価格1千万円下らない代物のようだ。
「値段の10倍どころか1000倍の代物が入ってる、超お買い得な福袋だったってことか……」
俺のような庶民層とは無縁なその高額お値段に、驚くというよりも呆れ返ってしまい、部屋の真ん中に突っ立ったまま、しばし呆然と佇んでしまう。
「…………って、それどろこじゃなかった!」
しばしの後、そんなポカンとしてる場合じゃないと気を取り直した俺は、どうしてこんなありえない事態になっているのかを確かめてみることにした。
と言ってもやれることは限られているので、ともかくもこれを買ったあの店に戻って、様子を覗ってみることにする。
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