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……ありえる原因としたら、どんなことが考えられるだろう? やはりブランドものアウトレットだし、海外から仕入れる際に密輸しようとしていたものが偶然紛れ込んだのだろうか? で、それを店の者が知らずに福袋に詰めて、それをまた偶然の悪戯にも俺が買ってしまった……と、考えるのがまあ常識的かな?
再び店へと向かう道すがら、俺はそんな可能性についてあれこれと推理してみる。証明することはできないが、それ以外にはこんな非現実的なことの起きた理由を説明することができない……。
「――アホンダラっ! なんてことしてくれとんじゃコラっ!」
だが、俺が店の近くまで行くと、何があったのか? ドスの利いた男の怒鳴り声が道の向こうから聞こえてきた。
見ると、件の店の前にはあの色っぽいお姉さんと黒服のスタッフ達が横一列に並び、その前に立つガラの悪いパンチパーマの中年男性が皆をドヤし上げている。
「アタシ、悪くないヨ! コイツらが福袋詰めタネ!」
「すいやせん、アニキ! 〝ブツ〟を入れたバッグも他のとまったく同じデザインだったもんで……」
そのいかにもカタギには見えないパンチの男性に、お姉さんと黒服も大きな声で言い訳を返している。
「大きな声でブツなんて言うんじゃねえ! 誰かに聞かれたらどうすんだコラっ!」
そんな店の従業員達に、男も他人のこと言えない大音量で、注意するように再びドヤし上げた。
だが、注意したところで今更である。俺を含めた周りの通行人達の耳に、彼らの話は当然まる聞こえだ。
もっとも、けして関り合いになどならないよう、皆、何も聞こえてないふりをして避けるように小走りで通り過ぎて行ってしまうが……。
「せつかく苦労して運んだってえのに……アレがいくらすると思ってんだっ! んな言い訳してるくらいなら捜せやコラっ! 質屋っていう質屋を当たれ! いや、似たようなバッグ持ってるヤツ見かけたら、その場で取り上げてでも捜せっ!」
そんな中、俺だけは数メートル離れた道端に留まり、彼らの会話から我が身に起きた出来事の説明をなんとか探ろうとする。
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