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先ず考えたのはやはり警察に届け出ることだったが、果たして「福袋に入っていた」などというありえない話をすんなりと信じてくれるものだろうか?
昨今は高校生にも薬物の濫用が広まっていることだし、下手をすれば俺の方が疑われてしまう可能性だってありうる。そうなれば、たとえ疑いが晴れて無罪放免されたとしても、世間はずっと疑念の目を向けてくることだろう……。
このSNS隆盛の情報化社会、俺が〝薬中〟であるというウワサは学校関係者などを通じて瞬く間に拡散し、未来永劫、俺は白い眼で見られながら生活することとなるのだ。
進学も就職も結婚も、老後の穏やか隠居暮らしすら諦めるしかない……。
それに、警察の捜査やニュースになった場合のマスコミの取材などがもとで、俺が薬入りの福袋を買ったことがあの店のヤツらにバレれば、逆恨みされてどんな目に合わされるかもわかったものではない。
これは、迂闊に警察へ届けるのも考えものだ。
では、どこかへこっそり捨ててしまうか?
……いや、それも誰かに見られたらまた事だし、それこそ発見されたら大事件になって、優秀な日本警察の捜査の手は確実に俺のもとへと到るだろう……俺、なんも悪いことしてないのに……(泣)。
とりあえず、押し入れの奥へ厳重にしまい込んで、家族にも見られないようにしよう……。
そう暫定的な方針を固めた俺は、無防備にも机の上に出したままにして来た〝ハンドバッグ〟のことを思い出し、さらに歩調を速めた――。
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