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だが、次の一言で俺の背筋は凍りついた。
「あんた黒田くんに持ってきてもらうつもりなんでしょ?」
馬鹿な。完全に見破られているだと……。いや、だがそれでも俺の勝ちは揺るがないはずだ。
「あんた最高峰にバカね」
ついに余裕どころか、満面の笑みを浮かべてきた。なんだ、どこからこの笑みはくるんだ。
しかし俺のその疑問はその後すぐに解消された。皮肉にも俺の勝利を知らせるはずだった鐘の音で。
ピンポーン。
黒田が着いた。勝った。勝ったんだ!
ホッとし、黒田に「いま出るよー」、と言って気づいた。
どうやって出るんだ?
鳴り止まない黒田のピンポンコールに、俺の体温がサーと引いていくのを感じた。
「あんたあのテーブルの蜜柑も取れない状況で、どうやって玄関の鍵開けんのよ」
やられた。思えばすでに布石はうってあったのだ。
あの禁止ルール、外部との連絡をとりやすい俺が有利で不公平という理由で禁止されたが、買ってきて貰うのが許される以上、あのルールが公平性を保つ根拠はない。
ならやつはなぜわざわざあのルールを作った?
ただの見落としか?気まぐれか?
違う!明確な意図があれにはある!
不覚にも俺はそれにかかった。
あのルールによって俺は外部を頼っての勝利は不可能だと、つい信じきってしまった。
もし万が一、あのルールがなければ俺は真っ先に黒田にテーブルの蜜柑を取って貰うことを考えただろう。
とすれば必然、試合開始前に玄関の鍵を開けておいたはず。
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