こたつの囚人

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人間は歳をとればとるほど猫化する、というのが俺の持論だ。 例えば雪が降ったとき。犬のようにはしゃいで外を駆け回るのは小学生までで、それを越えた人間の大半は、猫が如くこたつに半身を埋めるだろ? そして今、俺自身も例に漏れずこの猫化の傾向にある。 久方ぶりに氷点下を記録したこの年末の東京の街、そのマンションの一室で俺は朝っぱらからこたつにくるまって蜜柑を食べている。 これは齢17を迎えて、この俺もようやく大人の落ち着きと賢さ、猫っぽさを手に入れたって証明に他ならん訳さ。 「幸也(ゆきなり)、あんたなにさっきから独り言ぶつぶつ言ってんのよ。気持ち悪い」 俺の母親、朝海(あさみ)がじっとりとした目で俺を睨みながら、ゆっくりこたつに近づいてくる。 我が母ながら、相変わらず手厳しい。 こんなんだから、あんな父親しか貰い手がいないんだ。 未だに20代で通じるほど、息子の目から見ても美人で完璧なプロポーションを持つ母だが、如何せんその性格は都会のネズミより質が悪い。 まったく傍若無人、男を尻に敷く座布団どころか、その座布団をつくる工場で働く人の実家の横の部屋の住人の屁くらいにしか思っていない。
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