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とはいえだ。さすがにこればかりは言えない。
先ほどは気が緩んでつい考えていることを、口走ってしまった俺だが、今回ばかりはこの台詞を心の奥底にしまった。
万が一にも口に出してしまえば、おそらく『気持ち悪い』ではすまない。今度は平手や拳が出てくる恐れもある。
ぐっと、薬を飲み込むように、出かかった言葉を蜜柑の最後の一粒で押し込んだ。
そんな俺を尻目にやつは悠々こたつに入り込んでくる。丁度俺の対面。やつの定位置だ。
一般的な正方形、定員四人のこたつだが、そのある一辺だけは三人家族の我が家ではほとんど使われない。
理由は簡単、テレビに背を向けるからだ。
テレビを正面に見据えて左側、ソファを背もたれに利用できる特等席が、やつの指定席となっている。
テレビを正面から見れる席が父の、そして朝海の向かい、家の薄い外壁部分を背にして、常時、外の冷気を感じなければならない席が俺の定位置だ。
まさに家内のヒエラルキーがこの座席にも表れている。
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