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して、問題はその後。
このゲームの核心、おそらく、いや100%ただの暇潰しではないこのゲームの。
「で、何を賭けるかだけど」
ほら来た。つまりここが本音。俺への要求の部分。やつはそれをゲームの罰で達成しようとしているのだ。
「あんたが負けたら年始のバーゲン、私に付き合うってことでどう?」
まさに地獄への誘い。付き合ってただ一緒に歩き回る、なんて生温いことな訳がない。荷物もち、それも大量の荷物を持たされるリアカー係。
それだけじゃない。恐らくは鉄砲玉扱い。バーゲンに群がった、なみいる猛者と争わされ、よくも分からないブランドの確保を命じられる最前線の捨て兵役。
それをやらされるに決まっている。
「それであんたが勝ったらだけど」
俺が乗り気でないことを察知してか、やつはこちらの利に話を移す。
「今年のお年玉倍、いや三倍にするわ!」
その瞬間、俺の全身がひりつく。高校生にとってお年玉というのはずばり冬のボーナス、それがあろうことか三倍!三年分!
「どう?やる?」
これは受けるべき勝負、だがここで従順になってはダメ。ここまで条件を良くするということは、是が非でも年始のバーゲンに俺の労働力が欲しいということ。
つまりそれだけ本気のバーゲン戦争をするつもりなのだ。そう考えれば三倍だけでは釣り合わない。ここはもう一押し……っ!
「……譲ってよ」
「なに?聞こえない」
「もし俺が勝ったらお年玉三倍、そしてそのこたつの特等席、俺に譲ってよ」
朝海、一瞬だけ固まるが、すぐに不適な笑みを浮かべなおす。
「いいわ」
こうしてこたつ内の静かな闘いが始まった。
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