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しまった!この必勝法に気づかれた!
この蜜柑(の皮)をやつに食べられたらおしまいだ───。
ところがやつの次の行動は俺の予想を遥かに上回るものだった。
「ぶぇっくしょい!!!」
くしゃみ、蜜柑の皮に向けて盛大なくしゃみ。しかもしっかりと鼻をかみだした。皮の全体に満遍なく鼻汁が着くように、かむ。かむ。さらにかむ。
俺が茫然自失とその様子を見てると、やつはその俺の視線に気づいた。
「なによ、しょうがないじゃない。ティッシュはテーブルの上なんだから。別にこれだってゴミなんだし、いいでしょ?」
なんだと。やつは気づいていないのか、いま自身が鼻汁でべちゃべちゃにした物が勝利の鍵であることに。
いやそんなことはない。やつは分かっていた。そして潰したに違いない、俺の必勝の策を。
だが、それならばなおのこと解せない。
なぜ食べなかったのか、それを食べればその時点で勝負は決まっていた。
お年玉三倍づけはやつにとっても痛いはず、痛いはずなんだ。
確かに、蜜柑の皮を食べるのは己のプライドが許しがたいかもしれない。それでもここは利を取るはず。
だが、食べない。
なぜだ、考えろ。考えるんだ。
俺はひたすら考えた。あらゆる可能性を考慮した。そして、はっと気づく。やつの策、このゲームのもうひとつの抜け道。
あるんだ、やつには。皮なんぞ食わなくても俺に勝つ、そんなウルトラCのプランが。
思えばこの皮を食べようとした時に、俺はすでに気づいていた。
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