第二夜 小夜の呪縛

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「ああ、憎し。大徳寺家……。終生まで祟ってみせようぞ……」 そう言い残すと、小夜はさっと小刀で自らの喉笛をかき切った。 真っ赤な鮮血が部屋中を染め上げ、それはそれは凄まじい光景であったという。 それから、一年後。 ある客人が空き部屋となった小夜の部屋に一泊することとなった。 その客人は大徳寺家と同様の元貴族で大徳寺家当主・源蔵と旧知の仲であった風祭子爵であった。 その部屋は既に綺麗に改修され、予備の客室とされていたのだ。 翌朝、女中の一人が風祭を起こしにその部屋の前に訪れた。 しかし、何度声をかけても、ノックをしても中の様子に変化は見られなかった。 風祭という男は元来早起きは三文の徳を考え、早起きを日課としていた人物であることを彼女も心得ていたから、不思議に思った。 そしてもしや、急病かと心配になった。 「風祭様。風祭様。いらっしゃいませんか」 やはり、返答はない。 「風祭様。入りますよ?」 とうとう女中は堪らなくなって、その扉を開けた。そして、そこに棒立ちになった。 なぜなら、そこに風祭が倒れていたからだった。 彼の生命が既に潰えていることは、一目で分かった。 それだけ彼の形相は凄まじいものだったのだ。 彼は胸の辺りを掻き毟るようにして倒れていた。     
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