1人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
翌朝。静寂を破るように、つんざくような悲鳴が屋敷中に木霊した。
まさか、何かあったのか!
思わず私は飛び起きると、ベットサイドのメガネを探した。
こういう時に限ってなかなか見つからない。
私はうんざりするような乱視の混じったド近眼なのだ。
ようやくメガネを見つけ、いざ行こうとしたが、さすがに寝具で外に出る訳にはいかない。
椅子の上にかけたカーディガンを羽織る。こういう時、女は本当に面倒だ。
ようやく私が悲鳴の方角に近づいた頃には、既に関係者全員が集まっていた。正二郎を除いて。
「何があったんです?」
私は誰にとも無く質問した。それに答えたのは業彦だった。彼も寝巻きに上着を羽織っただけの姿だった。
「まあ、見たまえよ」
彼は端正な顔を少し強張らせ、ゆっくりと「開かずの間」の中を指差した。
その指先に視線を移した途端、私の口から思わず小さな驚嘆の声が漏れた。
微かに外の日差しが差し込む室内には、正二郎が物言わぬ死体となって転がっていたのである……。
以下次号
次回予告 「今度こそ町子さん危機一髪!」
最初のコメントを投稿しよう!