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業彦は相変わらずの笑顔だが、その目には言い知れぬ闘志のような光が輝いている。
やはり、目の前で殺人を行われたことは、彼のプライドをいたく傷つけたようだった。
本来なら現場に立ち入りたいところなのだろうが、そこは鑑識に任せたらしい。
「ああ。もちろんだ」
紀田も妙に力んでいるようで、荒い息で答えた。
「華代さんもつらいでしょうが、弟さんと叔父さんの為です。ご協力して下さいますね?」
業彦はそのNO1ホストも真っ青な流し目+微笑みを華代に向けた。彼女は一瞬肩を震わせたが、業彦を信じるように頷いた。
「では、今回の事件についてまとめていこうか。小町君。準備はいいかい?」
私は軽く手を上げた。OKというサインである。
このように、事件のメモを取るのは大抵私の役目だった。
その方が私自身、事件の概要がよく掴めるし、何よりあとで作品にする時に重宝するのである。
「第一の事件の発見者は……華代さん。あなたで間違いありませんよね」
「ええ。そうです……」
彼女はその時の光景を思い出したのか、両肩を自分で抱き締めた。
「その時の様子を詳しく教えて頂けないでしょうか」
「わ……わかりました」
そう小さく答えると、華代は意を決したように顔を上げた。
*
「お兄様、本当にこの部屋で一晩過ごすというの?」
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