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確かに、普通の意味での祖先ならば、何も怯える必要はない。だが……。
「わかってるよ。だから、今から君のその怯えだって何の意味もないことを証明して上げるんじゃないか。な?そんなに怖がるなよ。ご先祖様に失礼だろう?」
そう雪矢は笑顔で華代の肩にぽんと手を置いた。だが、華代にはどうしても安心することができなかった。
むしろ、その絵が浮かべる美しい笑顔が、言い様のない不安を掻き立てるのだった。
*
「お兄様……ここで夕食をとるなんて……本気なの?」
「ああ。もちろんじゃないか。ほら。だいぶ片付いただろう?掃除もバッチリ。もうここに住んでもいいくらいだ。あ……そうだなあ。いっそ、ここを僕の部屋にしてもらおうかなあ?ここは日当たりもいいし……」
華代は兄に頼まれて夕食を運んできたのはいいが、どうしても気が進まないのだった。
それはもちろん、単に黴臭いから、埃があるからという理由だけではない。
「君も一緒にどうだい?華代」
「い……いいえ……。私は……」
「ふふふ。まだ怯えているのかい?見ての通り、僕はまだぴんぴんしているよ。明日の朝の朝食はここで一緒に食べよう。朝ならもう怖くないだろう?だって、その時にはこの『呪い』が迷信だったって証明されるんだから」
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