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そう言うと、業彦は腕を組んで唸った。なぜか紀田も同じうように腕を組むと熊のように唸った。
その時、ドアが開いて、にきび面の幼い顔立ちの警官が言った。
「警部補。現場検証が終りました」
*
「さて……第二の事件についても考えないとね」
そう言うと、業彦は『開かずの間』で大きく伸びをした。
随分顔色も良くなったが、やっぱり、この部屋に入る時には小さく『南無阿弥陀仏』を唱えることを忘れなかった。
「ねえ。紀田さん。二人の死因は一体なんだったのかしら?」
私が問うと、紀田はぱっと顔を赤らめ、俄然張り切って手帳を繰り出した。
だから、私から質問するのは嫌だったのである。
「え~。大徳寺雪矢の死因はある種の毒物中毒っす。毒物の種類については今調べてる最中っすね。正二郎氏はまだ解剖中なんでわかんないらしいっすが、監察医の話では彼も毒物で殺害されたようっす。町子さん……お役に立ちましたすか?」
「は……はい。ありがとう。とても参考になったわ」
「それはよかったっす!俺は町子さんのお役に立てるだけで……」
はいはい……。
しかし、警察がまだ特定できない毒物とは……一体なんなのだろう……。
「これが問題の絵だね?」
そう言うと、業彦は隅の方の壁の前で仁王立ちになった。
「ええ。そうです」
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