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華代は怯えたように顔を背けた。見ると微かに泣いている。
「大丈夫ですよ。華代さん」
業彦は胸ポケットから気取った仕草でハンカチを取り出すと、さりげなく華代の涙を拭いた。
「この絵が問題の小夜さんですか?」
「その通りですよ。探偵さん」
その良く通るバリトンに振り返ると、そこには大徳寺月彦が立っていた。
業彦の肩が微かに震えた。
彼の「ライバルになるいい男レーダー」が反応したらしい。
こうなると、俄然業彦はエンジン全開になる。大抵から回りするが……。
「これはこれは月彦さん」
顔は爽やかな笑顔だが、内心穏やかではないはずだ……。本当に子供っぽい男だ……。
「その絵は、その昔ここに監禁されていた小夜を描いたものに間違いありませんよ」
「なぜそう言い切れるのです?」
「簡単です。僕は小夜の肖像を写真で見たことがある。その絵はその写真に生き写しだ」
「なるほどね……」
「僕はね。探偵さん。呪いは本当に存在するんじゃないかと思うんですよ」
「えっ?」
「ここに閉じ込められ、非業の死を遂げた小夜。その怨念は計り知れないものでしょう。その怨念に込められた力が……現在の僕らに降りかかっている。そうこの憎むべき一族である僕らに……ね?」
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