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「こんな時に不謹慎だと思われるでしょうが……。今度、ぜひお食事でもご一緒して頂けませんか?」
「えっ?」
「きっとですよ……きっと」
そう言い残すと、ついに彼は部屋を後にした。
*
「まさか……こんな日が来るなんてね」
そう呟くと、業彦は受話器に手を伸ばした。
そして、プッシュボタンに指をかける。どこにかけるというのだろう。
彼はなぜかスピーカーボタンを押した。
やがて聞こえてくる電子音。三度目のコールで相手が出たようだった。
「もしもし……僕だが……」
「きゃ~~~~~~~!業彦様ぁ~!」
き~んと耳をつんざくような黄色いキャンディボイス。
これは……紛れもなく……熱狂的な業彦のストーカーじゃなかった……友人の一人・藤原高子……。
「あの……高子。今日は君に頼みがあってね」
この最強のプレイボーイである業彦をここまで苦悩させることができるのは、世界広しといえども、この藤原高子だけであろう……。
「まあ!業彦様が私に頼みごと?高子、ついに業彦様のお役に立てるのね?高子、嬉しい☆」
この分では、まず用件を切り出すだけで、日が暮れてしまうだろう……。
「高子。少々急ぎの用件なんだ。君のその陰陽師としての技量が必要なんだよ」
「きゃ~!そんなことならお安い御用ですわ!高子にお任せ☆」
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